東海道でいつか京都まで:日本橋〜沼津

去年だったか一昨年だったか、浮世絵展を観に行った。東海道五十三次で描かれている各宿の浮世絵と名物に見入ってしまい、いつかこれを辿ってみたいと、セクションハイクならぬ、セクションジョギングの旅を始めることにした。スタートは日本橋。その日進んだ分は電車に乗って帰り、次回は前回行ったところまで電車で向かう。続けて走る(歩く)脚力もないので、電車で行けて帰れるのは都合が良い。せっかくなので東海道中膝栗毛を読んで行こうと思ったものの、読み進めるのを断念したままになっている……


①日本橋〜保土ヶ谷 37km

旅のお供にうさぎやでどら焼きを買う。日本橋のたもとで準備運動をし、目指すは京都!と日本国道路元標から走り始め、ほどなくして声をかけられる。Luftの桶田さんだった。東海道を走ってみることを告げ、スタートを見送っていただいた。あまりの偶然に暫く興奮気味であった。知り合いに会うのは後にも先にもこの時だけになると思うが、なんだか心強くて、再会する日が楽しみになる。大森の商店街は海苔屋が多く、産地だったことがうかがえた。川崎で奈良茶飯を食べ、横浜あたりでケチャップ発祥の碑を見つける(当時のケチャップを再現した商品があるらしい)。保土ヶ谷へ向かう途中に芝生追分の碑があった。東海道と八王子街道を結ぶ道(絹の道)の分岐点。学生時代八王子に住んでいたこともあり、絹の道という単語は知っていたが、ここにつながる道のことだったかと感心したのも束の間、先の洪福寺松原商店街に圧倒されてしまう。昔の旅人は保土ヶ谷で蕎麦を食べたらしいが、お腹が空いていなかったのでそのまま帰る。東海道を全面に出している商店街はわかりやすい、少し大きな道になると東の字も出てこない。


②保土ヶ谷〜大磯 38km

この日の旅には東海道最初の難所と言われた権太坂がある。たしかに坂であった。街道には一里ごとに塚が設置され、道沿いには旅人の休憩場所として松の木が植えられていたそうだ。松並木は海沿いにあるものだとばかり思っていた。復元された塚、そのまま残されているもの、保護されている松、行く先々でそれらはさまざまな形で残っているのだけど、表示もさまざまだった。歩く道として残っているわけでもない、旅人も全く見かけないので、統一する必要もないし、史跡として保存されているだけでもありがたいのだけど、何か一つ共通の目印でもあればと思っていたところ、1号線沿いの電柱に宝ビスケットの小さな看板が出てきた。先を見るとずーーっと向こうの電柱まで、宝ビスケット、宝ビスケット、宝ビスケット。進めど進めど宝ビスケット。つまらない道がだんだん可笑しくなってきて、この区間は宝ビスケットに励まされた。藤沢を過ぎ、平塚から高麗山を横目に化粧坂あたり、この辺の松並木は良かった。道が海に近くなったのか魚屋をよく見かけた気がする。大磯に着き、海に出た。夕焼けが素晴らしかった。広島焼きを食べて帰る。


③大磯〜箱根湯本 22km

天気は晴れ。スタートの大磯で西行饅頭と虎子饅頭を買う。今日は富士山がよく見えるだろうと思っていたのに、富士の方は曇っていた。海を見ながら走れるかと思っていたのに、そうではなかったが、海からの風は気持ちが良かった。大きな道から街道に入る道をよく見失うので、道沿いに松があるかを見るようになる。道中で「日本橋から5日目」と書かれたカードを持って歩く旅人がいたので頑張ってくださいと声をかけた。小田原は藤沢に似て街も道もよく整備されている。外郎を買う(お菓子の方)。小田原を過ぎると上り坂になり家やビルが木々に変わった。山へ向かうのだ。当たり前なのだけれども、進むにつれて次のスタート地点は遠くなる。日帰りでちょろっと走って帰るのはどうも効率が悪い。しかしながら箱根を越え三島まで行く脚力もないので、次回スタートしやすい箱根湯本までとした。箱根湯本で温泉、小田原に戻ってアジ丼を食べ、干物を買った。


④箱根湯本〜沼津 35km

いよいよ峠越え。山を歩くのは久しぶりだった。車が走る横を行くよりも断然おもしろい。ここでは旧東海道と書かれていた表示が、箱根旧街道となる。その昔、箱根の山は道のぬかるみがひどく、歩くのが困難となっていたことから石が敷かれたそうだ。その石畳が当時のまま残され(整備され)た街道は、今までになく人が歩いている。旅人の足によって磨かれた雨上がりの石畳は滑りやすく、おいそれとは歩けなかった。甘酒茶屋にて甘酒とうぐいす餅で一息、芦ノ湖で関所を通り、いよいよ静岡三島を目指す。石畳の崩壊で通行止めの区間がある為、迂回ルートを案内しているおじいさんがいた。この先飛んで行くでしょ?と聞かれ、一瞬フリーズしたものの飛ぶ=走るに変換し会話を続行。この日一番の坂はこわめし坂であった。三島大社で福太郎餅を食べ、沼津まで行けそうだったのでそのまま走った。沼津から電車で熱海に向かい温泉、寿司を食べて帰る。この日も富士山を一瞬たりとも拝めなかったが、静岡に入ってから集落を通る街道は何があるわけでもないのだけど、良かった。


日本橋〜沼津118km。京まで残り約377km。静岡県越えの道のりは長い。浮世絵展でみた安倍川餅、とろろ汁もこの先にある。夏は身軽で良いのだけれど、強い日差しにアスファルト、気温を考えるとゾッとする。次回の沼津スタートはいつになるやら。