UTMB 2023 サポート体験記

フランスのシャモニーで開催されたUTMBへ。私はOCC(55km)の抽選に外れたため出走は叶わず、夫のサポートとして参加。サポートと言っても、特に何もいらないというレース前の言葉を鵜呑みにし、道中応援くらいの軽い気持ちで、応援がてらハイキングしようかな〜、とかそんなことばかり考えていたのだが、想定外の夫の不調により、がっつりエイド回りをすることになってしまった。

UTMBバスとサポート

私は大会のサポートバスで各エイドを移動した。このバスに乗るには事前予約が必要で、予約オープンのメールは選手に届く(今年は7月上旬)。料金は65€、9/1~9/3のレース期間中は乗り放題(UTMB以外のレースのバスは料金や乗れる期間が異なる)。レースまでに現地の案内所でチケットならぬリストバンドと時刻表をもらう。COURMAYEUR(伊)、VALLORCINE(仏)へは、時間帯によっては公共交通手段もある。

エイドの受付でサポートする選手のバーコード付カードを提示し、スタッフがエイド予想到着時刻と照らし合わせ、おおよそ10分前〜サポートエリアに入れるようになる。ここのチェックは厳格だったが、バス乗車時にリストバンドのチェックはなかったように思う。細かなことはwebガイドでどうぞ。

リストバンドと時刻表。これとアプリで選手の予想エイド到着時間をチェックして移動した。バスの時間はアバウトだったような気もするが、乗れないとかはなかった

スタート

9/1・18時、週間予報では天気が危ぶまれていたものの見事に晴れ渡り、モンブランもよく見える中での最高のスタートとなった。画像や映像で見てきたゲートは本当に町の中にあって、コース付近以外は選手と観客とのエリアは明確に別れておらず、選手も応援者もごっちゃになってスタートを待っていた。

スタート前

最初のサポート、COURMAYEUR(81.3km地点)

スタートを見送りその足で、あらかじめ宿を取っていたクールマイヨールへ向かう(クールマイヨールはCCCスタート地点)。大会バスは観光バスのような大型のバスで、この時間から向かう人はかなり少なかった。モンブラントンネルに入るまでに時間がかかり、トンネルに入ってしまえばスムーズだったような気がする。18時半発のバスで20時頃に到着し、辺りは暗くなり始めていたが、プランパンシュー氷河は圧巻だった。

プランパンシュー氷河。バスの窓から

エイド会場となっているスポーツセンターはひっそりとしていた。この時はまだ、サポートはここだけになるかもな〜などと思っていた。夕飯はピザをテイクアウトした。さすがイタリア、めっちゃおいしかった。そして案の定食べきれなかった(朝ごはんにした

トマトソースだけで焼いた生地に、フレッシュなルッコラとハム、チーズ(モッツァレラとグラナパダーノ)丸々のオリーブがどっさり。無惨な姿ではあるが、もともと丸い形で出されるピザではないようだ

翌朝6時、エイド会場付近にスタンバイ。建物周辺では寝袋で寝ている人もちらほら見かけた。夕方スタートで夜通し走り続けた選手がやってくる。この人たちはここからまた100km近く走るのか…考えただけで気が遠くなった。

ドロップバック置き場。エントリー数が2700人を超えていたから、2000人以上分はあるんだろう、と思う

スタートから12時間以上が経ち、調子が上がらず予定より遅れている夫から、エイド着直前に「オレンジジュースが飲みたい」とリクエストが届く。慌てて町中心部にある7時半〜のスーパーへ行き、宿に戻って水筒にお湯を入れてもらう。エイドが町中から少しだけ離れていたので走った。スーパーの朝が早くて助かったのだが、応援したかった選手には間に合わなかった。8時頃に到着した夫はカップうどんを食べた(万が一のために持って行っていた)。サポートエリアではあらゆる国の選手が、限られたテーブルと椅子をうまい具合にシェアする。マッシュポテトとご飯(!!)、トマトソースっぽいペンネ、サンドイッチ、各々のサポート飯は様々だった。見よう見まねのサポートっぽいことをして夫を見送る。エイド内にタイツアー主催の方がおられ、わからないことを聞けたのは心強かった。

朝イチのカルフールにて大急ぎで入手したもの。桃ジュースとバナナヨーグルトとジンジャーティー。あとオレンジジュースとぶどう。カロリーのある固形物なら何が良かったのだろう

サポート用カードを預かっていたもう2人の選手の予想到着タイムが11時頃に30分間隔だったので、チェックアウトを済ませつつ到着を待つことにした。普段接点のない方たちだったのだが、過去の成績などを聞く限り、この2人が同時間帯に来ることはなさそうだったから、あれ?と思っていた。11時半頃、1人到着、その10分後くらいにもう1人到着。夫の時間帯よりもエイドスペースは混雑していた。目の前に2人が並び、かたや調子が良さそうで、かたや疲れているようだった。とりあえずオレンジジュースを勧めた。

反省点としては3人共がエイドに1時間近く居座っていたことだ。ちょうど半分の地点で、ドロップバッグもある大きなエイドだったから、ちょっと時間がかかるところなのかもしれない。知り合いがいるとついつい話してしまうし腰を落ち着けてしまうのかもしれない。せめてタイマーで時間を切るとか、強制撤収でもして送り出せば良かったのだろうかと、今となっては思う。

町中からエイドに向かう途中。余談:建物の屋根がスイスで見かけた石の屋根だった。直線距離で20kmくらいなのにフランス・シャモニーの建物の屋根とは違ったのがおもしろかった

COURMAYEURからCHAMONIXへ

クールマイヨールではUTMBコースにもなっているトレッキングルート(TMB)をハイキングしようと考えていたのだが、落ち着いた頃には昼になっていた。一旦、木陰に腰を下ろす。この後スイス側のエイドへ行くことは決まった。しかし時間はまだある、おまけにこっちは日が長い。ハイキングは4時間のコース、ちょっと行って帰ってくることもできるだろう。もしくは周辺散策の選択肢もある。しかしながら増えた荷物と容赦ない日差しに負け、シャモニーへ戻ることにした(スイス行きのバスがシャモニー発)。

時刻表を見ると20分間隔で1時間に3本、12:40発のバスに乗れそうだ。急ぐ必要はなかったものの、モンブラントンネルは渋滞で移動時間が読めないとあったので、バスに乗った。ここでリタイヤを決めたのだろう選手も乗っていた。

時刻表

女子トップ選手のゴール

乗車時間は2時間ほどだったか、早めに出たおかげで買い出しも、荷物の入れ替えも慌てなくて済んだのだが、中途半端に時間ができてしまったので出発までゴールを見ていた。こうなったら女子トップ選手のゴールを見てやる!と意気込んだ(17:30頃)

カメラマンの間から見たCourtney DAUWALTERのゴール。大興奮の瞬間!
ファンの応援
町中からモンブランがよく見えた

CHAMONIXからCHAMPEX-LAC(127km地点)

不調の原因が時差か標高か疲労なのかわからないが「水が合わないのかもしれない」と連絡を受けた。今年から大会の水が水道水になったそうだ。エビアンのでっかいボトル、サンペレグリノ炭酸水、湯にオレンジジュース、りんごのペースト、予備のうどん、クールマイヨールで食べなかったものなどなど、持てるものを持ってバスに乗り込む。時刻表を見る限りシャンペへは2時間ほどかかるようだった。バスはほぼ満席だった。日本のトレラン先輩に出していたヘルプの返事には「胃を温め、とにかく食べるように」と書かれていた。スイスのオルシエールで大型バスから小さめの市バスのようなバスに乗り換える(オルシエールはOCCスタート地点)。このバスでは座れなかったが、一番前で視界の開けた山をぐんぐん登っていく様子を見られたのは満足だった。運転手さんが聞いていた音楽はリズムも言葉も聴きなれないものだったが、山道をノリノリで運転しておられた。シャンペに着いた頃は薄暗かった(20:30頃)ようやく調子が戻ってきたのか夫は想定よりも早く着き、慌ててエリアに向かった。あご出汁にライスを少し入れたもの、バナナヨーグルトを食べた。

サポート受付からのエイド内の風景

ここのエイドにはサポートのための食事処があった。ソーセージと芋、豚のグリルと芋というようなメニューで、支払いは現金のみ(ユーロ、フランどちらでもok)。夫のサポート後に味わった(豚と芋)。座った隣は日本の方々だったようで、国内レースの話が聞こえてきた。日本の方ですか!と声をかけそうなところ、もうその気力がなかった。向かいはどこかの国のご婦人だった。ちょっと荷物を見ててくださる?と言われ芋を食べながら頷いた。

こっちに来てから芋摂取量が格段に増えた。そう言えば一昨日も豚と芋だった、など思いながらの夕飯。芋は好きなんだけど

CHAMPEX-LACからTRIENT(143.6km地点)

シャンペからオルシエールでの乗り換えを挟み移動すること約1時間、トリヤンのエイドは音楽がガンガンかかっていて(どこのエイドも音楽がかかっていたらしいが、私はここの記憶しかない)、スタッフもノリノリで、酒を片手に選手を待つ人も多く、その雰囲気に移動疲れが幾らか紛れた。大会スタッフ用のキッチンがあって、ラクレットを作っているようだった。2時間近く待っただろうか、ようやくサポートエリアに入って陣取った席の隣はアフリカの方だった、自撮りでノリノリだった。向かいの美人さんはエビアンとプレッツェルブレッドのサンドイッチをテーブルに並べて選手の到着を不安そうに待っていた。やってきたのは納得の選手だった。夫はうどんとぶどうを食べた。エイドを後に夫を見送る最中、暗くて形の見えない山に選手のヘッドライトがポツポツと光っていた。

サポートエイド内。24時過ぎ
明るい時間の景色を見てみたい。左は教会、右は救護センター

TRIENTからCHAMONIX

シャモニーに戻る間にもう1箇所サポートできるエイド(VALLORCINE 155km地点)があったのだが、もう大丈夫という言葉にシャモニーへ戻ることにした。ホッとして、なんとなく駐車場っぽいところに出た。何人か並んでいたので、その後ろに並んだのだが、ここに着いた時こんな場所だっただろうかと思い、ここはUTMBバス乗り場ですか?と聞いてみたら、そう思っている、という返事。私の後ろにも人が並んだ。しばらくして、それらしきバスが目の前を通り過ぎていった。親切な人が「バス乗り場はあっち!」と指差していた。最後の最後にどこかの国の知らない人たちと真っ暗な道をバス乗り場目指して走った。バスは満席で、私は爆睡だった。シャモニーに着いたのさえ気付かなかった。2時頃。

ゴール(173km)

夜中のゴールは、昼間ほどではないにしてもアルコールが入ってテンション高めな観客がいた。早朝となると、観衆に囲まれたゴールとは真逆の静かな空気が流れていた。4時半頃にゴールした選手を見て、その1時間後にゴール予定の選手を見届けようと思ったものの睡魔に負けた。夫はさらにその後にゴールした。これまでの大移動と各エイドで見てきた熱気を思うと、とても静かで落ち着いたゴールだった。

真夜中のゴール風景。2時ごろ
早朝のゴール風景
朝のゴール風景

意識が朦朧とする午前中、行こうと思えばもう2人のどちらかに最後のエイドでオレンジジュースを差し入れるくらいできたかもと今になって思うのだが、その時そんな考えは微塵もなく、午後のゴールを迎えることしか頭になかった。寝過ごしてしまわないよう早めに外に出た。ゴールも町も大盛り上がりだった。

午後のゴール風景
ここはコースでもある町の通り。選手が来たらさっと道が空いて(誘導とかいない)人々が「ブラボーーーーブラボーーーー!」と言いながら拍手をして迎える。国も面識も関係なく、選手を讃える光景はただただ平和だった

想定外の不調に苦しんだ結果は、また出たいという火種になってしまっているようだが、壮大な山を前に山に入ることもなく、ひたすらバス移動だった私からすれば、絶景の中を走って完走して十分じゃないか、と思うのだけど、このお祭りを体験してしまうと、また来たいと思ってしまうのは仕方がないように思う。楽しいんだもの。

総括

エイドでのサポートとは大袈裟にいうとF1のピットクルー。補給(食)、交換(着替え、ボトルの水の入替、補給食の選定補充)、充電(時計、携帯)、メンテナンス(マッサージ、テーピング、話を聞くとか励ますとか?)をできる限り素早く行い選手を送り出す、のが役目なんだと思う。まぁできるわけもなく、移動だけでどたばたしていたUTMBだった。これだけバスに乗ったのにバスの写真を1枚も撮ってなかった。ありがとうバス。

不調に苦しみながらも夫が見ていた風景。最高やないか